力を抜く身体目指し古武術稽古

脱力したら体は動かない、きちんと体を動かせた時力の存在は無くなる。そのために構えを創る事に全力を尽くそう。

胸の働きで手先を動かす

ヒトは道具を使ったりそのままダイレクトに作用させたり、手で作業を行います。

作業を行う上で機能させる手ってどこからどこまでを指すのでしょうか?

指先から手首まででしょうか?

それだけだと握ることはできても、その場で動かすことしかできず、ピアノであれば1オクターブしか鍵盤が叩けません。

自由度の高い動きを行うとすれば、肘も肩も動いた方が自由度は高まります。

では、背中や腰、脚も動けばもっと自由度はたかまり動き易く作業ができるのではないか。でも、脚や腰は手の範囲とは言いにくいです。

では手の働きは身体のどこまでを指すのでしょうか?

一般的には肩甲骨や鎖骨を含めた上肢帯を指すことが多いようです。

鎖骨や肩甲骨が手の動作に参加すれば自由度は高まり色々な可能性が広がります。

最近の体幹ブームで肩甲骨が注目されていますが、手先の動きが肩甲骨を介して動く感覚はなかなか捉えにくいようです。

まして、鎖骨の動きとなると余計に解りにくいです。

そこで肩甲骨、鎖骨と個別に捉えるのではなく、胸部を動かす事で結果的に肩甲骨や鎖骨を動かす感覚を身に着けることお勧めします。

胸部は、身体の中で一番動かしにくい部位とされていますが、この部位が動くことによって、手の動きを指先から肩口までではなく、胸部の肋骨下部までとすると動かせる範囲が断然広くなります。

身体の広い範囲を使って身体を動かすことが出来れば、狭い範囲で力を出力するより余裕を持って力を出すことが出来ます。

 胸部の操作で指先を動かせば、指先には余計な力みが必要なく動かすことが出来るので、指先は力仕事をせずにコントロールだけすればよくなり指先の動きに余裕が生まれます。

指先はコントロールだけで力の出力は胸部からの力で動くのです。

問題は、胸部で作られた力がエネルギーロス無く指先に伝わること。

指先の力で指先を動かすことは普通ですし、そのものを動かすので力のロスは有りません、しかし、指先の細かな筋肉の出力は胸部の出力に比べれば小さいものなので、大きい筋肉に比べれば余裕が有りません。

そこで胸部の大きい筋肉で生まれた力を指先に伝える時に、脇や腕の使い方でネルギーロスが生じてしまいますので、そこで脇を締める必要性が生じるのです。

脇を締める事により胸部で作られた力がロスなく腕に伝わり指先で作用する使い方を学ばなければなりません。

 

 

 

 

 

脇を締めると力が三倍!×3

脇を締める際に胸部の働きが重要です。

中国武術に站椿功(たんとうこう)といわれる型があり、両腕を胸の前で大木を抱え込むように丸く使って立ちます。立禅とも云われています。

一見簡単そうな形ですが、やってみると気付かれると思われます。

大木を抱え込むように両腕を丸くすることが意外と出来ません。

上から見て丸い大木に、体、上腕、前腕、手が巻きついたとしても、それぞれの間が折れ曲がってしまい、丸い大木に対して7角形になっています。

体と腕が丸く使われることを求められています。

絶対といっていいほど、腕の付け根や肘、手首が折れ曲がり、角ができてしまいます。

関節の構造上しょうがないと云ってしまえば終わりですが、そこを何とか角を小さくして関節を丸く使えるようにする事が稽古のポイントとなります。

関節を丸く使うことにより途切れず力を伝達することができ、この形を作るためには必ず胸部の働きが必要になります。

まず、丸い大木に体を付けると胸の真ん中辺りは大木に付きますが、腕に行くほど隙間が出来てしまいます。そして、肘の内側や手首の内側にも隙間が出来ます。

この隙間を埋めるために、胸を働かせ胸を丸く使います。

胸を丸くとは、身体を上から見て胸部の中央部が凹む感覚です。

胸部の中央部が凹むと腕に近づく程に隙間を埋めることができます、そして胸が凹めば凹むほど円周に接する距離が延長され、肘から手首指先までを丸く接することができるようになります。

腕をいくら円周に近づけても近づくものではなく、胸部を最大限使う(この場合は凹ます)ことで、上肢の働きが生まれます。

胸部を凹ますこと自体が一般的ではありませんし、解剖学的にもありえません。

ただ、人体解剖学とは死んだ人の構造と形態を学ぶことであって、そこには働きとなる機能は含まれていません。

機能は生きて動いている人の働きを学ぶことが最適であり、古の武術は現代でも最先端の理論を持ち合わしていると思います。

そのような中から胸部を凹ます事があり得るのです。

この胸の働きを保ちながら脇を締めると、体と腕が一体となり体の働きが腕や指先に100%伝えることが可能となります。

一般常識では考えられないことがあり得る一例でした。

 

 

脇を締めると力が三倍!×2

締める・閉める・絞める・〆る、しめるにもいろいろあります。

「〆る」は人には使わないし「絞める」は人に使っても首ぐらい。

「脇を閉める」となると腕を体に密着して閉じた感じで、「脇を締める」と脇が緩みがなくたるんだ感じが無いように思います。

一般的には、肘を体の側面に引き寄せて上腕を体に密着させ、脇を閉めた形がイメージし易いのではないでしょうか。

見た目には腕が体に密着して固定力が強そうで安定した形に見えます。しかし、腕を体から引き離そうと引っ張られるとかなり強く頑張らなければ、動揺してしまいます。

その点、見た目は「脇を閉める」と同じように見えますが、「脇を締める」状態はゆるみとなる「あそび」が無くなりきっちりとしていて安定感が有りそうです。

締めることで、「あそび」が無くなり固定力が高まりますので力を入れなくとも安定性が高くなります。

この脇を締めた状態ですと、腕を引っ張られても固定力が高いのでそんなに力を入れなくても安定します。

この締める状態は、体に対してやや上腕が外旋した形となります。(腕が内方に巻き込み肘の頭が内側から前に向かう感じ)

ただし、腕を絞ってはなりません。

絞ると筋肉の緊張の不均衡が起こり不安定要素となります。そして安定させる為に筋肉を緊張させようとしてしまい余計な力が入ってしまいます。

腕を絞らずに締める事が求められます。

腕を外旋させる筋肉と内旋させる筋肉の緊張をバランスさせることにより結果的に脇が閉まった形になることが理想です。

このとき、胸部の筋肉をコントロールすることで腕の内外旋の均衡が取れた時に腕が締まり、胸部がやや開き落ちている感じがします。(個人的感想)

 ただ、この形が出来ても体で作り上げた力を腕に伝えるルートが脇と云うポイントを通過することが重要です。

それぞれの条件がそろった時に出来上がった形がベストであり、シュチエーションによって条件が変わるため「この形が脇に締まる形です」とは示すことは出来ません。

機能する形は条件で変わります。

ですから、マニュアルや写真で表すことができません。

あったとすれば、それは機能が伴わない形だけの形骸化した形となるでしょう。

脇を締めると力が三倍!

にくづき偏に力が三つで「脇」ってなんて魅力的な漢字なんでしょうか。

昔の人は、脇が力を出すための重要ポイントだと十分認識しています。

では、脇とは身体のどこを指すのでしょうか?

腋の下のこと?

そこは腋窩と言います。

私が思うに「脇」とは場所でなく、はたらきを表すポイント(点)ではないかと考えます。

体(体幹部・躯幹部)で作り上げたエネルギーを手先に伝えるはたらきを「脇」というポイント(点)が力を伝達する役割を担っているのではないかと思います。

この脇のはたらき如何で一つの力しか伝わらないのか三倍の力が働くのか、はたまた一つも力が伝わらないで分散するのかが「脇」で決まります。

力が体から腕に伝わるためには、関門となる体と腕のつなぎ目でうまく伝わる事が重要であり、その力の伝わるルート上に脇があるのではないでしょうか。

一般的動作は、回転運動を伴うため少なからず遠心力が生じます。そうすると身体の外側に力がかかり易くなるため、体から腕に力が通過するときに、身体の外側である肩を通って力が伝わろうとします。

肩は身体の中心部から一番外側にある部位ですので、力が外側に逃げてしまう可能性が出てきます。

体の中心部で作られた力が手先に伝わるまでに、外側に逃げないようにできるだけ最短距離を通過した方が効率が良いと考えれば、体から腕に力が通り抜ける時に身体の外側ではなく内側を通過した方が直線に近くなり力が外側に逃げにくくなります。

そのような意味合いから身体で作られた力を腕に伝えるには、肩の内側を通るルートが効率良く力を伝えるのではないかと考えます。

脇を締めるとは、この内側にある力のルートを外側に逃がさないようにする行為になります。

逆に脇が甘くなると、体から腕に通る力のルートが外側である肩口に寄り、力が分散してしまい力が伝わりません。

脇を締めた状態は、体で作られた力が三倍になって腕に伝わり上肢のパフォーマンスを高めてくれます。

では、脇を締める状態はどのようにすればできるのでしょうか。

脇を締めようと形に捉われてしまうと、腕を体にくっつけなければならないといけないことになってしまいまい、そんなことに捉われていると動けなくなってしまいます。

形はあくまでも最終的に現れた結果的なものなので、初めから結果を求めても中身がなければ意味がありません。

中身となることは、身体(体幹部・躯幹部)で作り上げた力を腕に効率良く伝える事なので、これが出来た時に脇が締まった形に必然的になっている事が理想的です。

ポイントは、上腕が外旋している事ですが、その形を腕ではなく体で作る必要があります。腕の筋肉で上腕を外旋させると前腕も一緒に動いてしまいます。

体(体幹部・躯幹部)で作られた上腕の外旋は、前腕に干渉せず上腕だけを外旋させることが出来ます。

動かすべき筋肉だけを動かし、動かさなくてよい筋肉は動かさない。このメリハリが重要であり、動かした筋肉に釣られて動いてしまっているようでは筋肉を制御できているとは言いがたく、脇が締まっている形になりきれていない可能性があります。

2019年12月11日追記

上腕だけを外旋しても脇が締まる事にはならず、体(体幹部・躯幹部)の作用がきちんと腕につながる事で脇が締まる状態になります。

 

 

ピアノの鍵盤をお尻から叩く感じ

身体の重さが持つエネルギーと物体が「ある位置」にあることで物体にたくわえられるエネルギーいわゆる位置エネルギーが同じであるような無いような。

 わからない。

それよりも、筋力エネルギーではなく身体の重さが持つエネルギーが如何にロス無く伝えること関心があります。

私であれば68kgのポテンシャルをそのまま生かす動き方であり、その動きが100%出来たときには重さ0kgの感覚になるはず、いやなるに違いない。

身体を動かす、または使うとは身体の重みを移動させる事なのでこの重みが0kgになれば楽に動ごけるし、この重さのポテンシャルを有効利用すると、筋力エネルギーは最小限で身体をコントロールすることが出来るので効率の良いパフォーマンスが期待できるはずです。

この身体の重さが持つエネルギーは、重さのある身体の中心部に一番ポテンシャルが潜んでいるので、この身体の中心部から動き出す事が理想であり、最終的に手先や足先、身体の表面に伝わりそのエネルギーが人や道具に作用する形を作りたいのです。

問題は、身体の中心部から身体の外部にある道具や人に作用させるまでのエネルギーが通過するルートが重要で、ルートの取り方如何でロスを減らし力のポテンシャルをそのまま伝えることが出来ます。

逆に効率の悪いルートを選択した場合は、身体の外に出る前にエネルギーが身体の中で分散してしまい、身体の表面に現わすことができないで終わることもあります。

例えば、ピアノの鍵盤を叩く時に指の重みより体の重みの方が力のポテンシャルは高いので、体のより多くの部分を参加させたいのです。

指先だけでなく、指先から動きの止まる椅子との接点までを使って鍵盤を叩くことで筋力エネルギーは少なくて済みます。

しかし、指先からお尻までをどのように動かすかが問題です。

普通は、鍵盤に近い指先や腕に力を入れますが、体の重さを利用しようとすれば 指先から椅子との接点であるお尻までを動かして鍵盤に力を伝える事ができれば、腕力ではなく身体の力として力を出力する事ができ、少ない力で作業ができるはずです。

私はトレーラーを運転したことはありませんが、イメージとしてトレーラーをバックで運転し動きをコントロールする感じが近いように思います。

普通の指や腕で行う操作は、動力車(エンジンのあるところ)が先頭で台車を引っ張る形ですので、動力車の動きが即作用しますが、エンジンの出力以上の力は出ません。

しかし、トレーラをバックで動かすと、動力車(エンジンのあるところ)がお尻の部分になり、そこから台車を後ろからコントロールすると、作用させるべき一番後ろ(指先)にはエンジンの出力と台車のが持つ重みのエネルギーも加わるので力が強くなります。

よって、強く力を入れなくても力が出るのです。

問題は、トレーラーをバックでコントロールする事は大変難しいことです。

台車を前から引っ張ることよりも後ろから押すことの方が数段難しくなるからです。

おもちゃのプラレールを先頭車を持って引っ張るのと、最後尾車を押してレールのないところを真っ直ぐ走らせればわかりますが、断然後者は難易度が上がります。

身体にはジョイントが幾つもあり、お尻から指先の間にもいっぱいのジョイントがあり、それを思ったようにコントロールすることが大変なのです。

お尻から指先までプラレールの車両が並んでいて、お尻にある最後尾の車両をちょっと押すと指先にある先頭車両がぴょこんと動く感じでしょうか。

しかしたいていは、列車の途中で連結部があらぬ方向に動いてしまい、力の強くかかったところが折れ曲がってしまい、車列が崩れて動きがそこで途絶えてしまいます。

力を使うことよりも動きをコントロールすることが重要です。

当たり前に身体を動かすのではなく、体性感覚などの感覚を総動員して自分の身体の色々な部分を動かしてみましょう。