力を抜く身体目指し古武術稽古

脱力したら体は動かない、きちんと体を動かせた時力の存在は無くなる。そのために構えを創る事に全力を尽くそう。

キムヨンジャさんの発声は身体のキレが素晴らしい


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82歳の母親が見ているTVの調子が悪くなったので約20年ぶりにTVを新調したのですが、1インチ1万円の時代からすると安くなり、また性能のUPに驚いてしまいました。

特にネット系の癒合は凄いですね。

早速ユーチューブの音声検索を母に教えるために、趣味のカラオケでよく歌う人を音声で入力する練習をしてみました。

何人か上がる中の一人に、キムヨンジャさんのTV動画に目が留まったのです。

思わず二度見してしまいました。

私は歌唱力の事はよくわかりませんが、体幹部の動きが素晴らしい。そして、身体の動きで発声されている様子が大変わかりやすく、音を消してもいい声が出ていると映像を見ただけでわかるくらいです。

特に身体のキレが凄いんです。

胸部の瞬発力を使って発声を飛ばすしぐさは、思わずぞくぞくしてしまいました。

根本的に一般人とは全く違う発声方法だと思われます。

 

古武術稽古においても一般的な動作ではない動きが求められ、胸部の働きは大変重要な要素ですが、なかなか思うように動いてくれない日々が続きます。

古武術の術歌に歌われるように「テヲモッテセズ、アシヲモッテセズ」は、手足を使わず体幹部を使えとする教えだと理解していますが、そうすると手も足も出せなくなってしまいます。

ですから胸部の働きにより動作を完遂しなければなりません。

今風に言えば、体幹部の大きな筋肉を鍛えて力を発揮する体幹レーニングの様ですが、胸部は全く正反対の力の使い方になります。

現代運動学やスポーツ医学などは、体幹部を鍛える事=筋トレが一般化し、筋肉を締めることで動作を行いますが、古武術での筋肉の使い方は、筋肉の緊張を緩めた時に動作できる様に神経と筋肉の疎通を組み替え作業を行います。

 

キムヨンジャさんの胸部を見ていても、筋肉を緊張させて締めている様には見えません。

十分に緊張が緩和された状態から胸部が地震の断層ずれのようにいきなり動き出す。

この緩和状態から動き出しが非常に速い。この速さがキレの元だと思われます。

まず、立位で歌う態勢になるだけで一般的には、身体に力が入り胸部が圧迫されてしまいます。

しかし、キムヨンジャさんの立ち方は、身体のいかなる影響も受けずに胸部をフリーな状態に保持されているように見えます。

一般的には、ヒトは物理的空間で立位を維持するために、必ず抗重力筋なるものが自動的に働き、自動的に緊張し身体を保持します。

ですから、重力に押しつぶされずに地球に張り付かなくて済んでいます。

地球に立つって結構な力を使っているのですが、ほとんど実感がありません。

普通は、この力が胸部を締め付ける結果となり、胸部の働きを制限しますが、彼女にはこの胸部への締め付けがない様です。

ですから、胸部が他の部分から独立しているので締め付けられることもなくフリーな状態で維持できているので、胸部の緩和状態を保持する事が出来ているのでしょう。

その究極に緩和された状態からいきなりチョットだけ筋肉がスライドすると、単位時間内のエネルギーの出力は相当なものになるのではないでしょうか。

長い時間をかけて徐々に大きな力を出力するのではなく、極短い時間でいきなり筋緊張のピークをチョットだけが、キレの本質だと考えます。

しかし、筋肉を緊張させているといきなり緊張をピークに持っていくことは難しいのです。なぜなら、筋肉が緩和しているところからスタートが重要で、筋肉が緊張していれば、一旦力を抜いてから緊張を始めるという2行程の作業が必要になり、1行程でいきなりという状態ではないからです。

そしてその1行程において筋肉を緊張させ締めるのではなく、移動させる感じ。

この感覚がつかみにくいのですが、自分では位置エネルギーが下がると同時に動くと抵抗感がない感じで動けるときがあり、そんな時に短い時間で筋肉がスーッと動く感じがあります。

筋肉が緩和した環境、極めて短い時間少しだけで、筋肉を締めずに身体を動かすこと。

現代運動学にはない発想でしょうか。