力を抜く身体目指し古武術稽古

脱力したら体は動かない、きちんと体を動かせた時力の存在は無くなる。そのために構えを創る事に全力を尽くそう。

マッサージの効果は重力を味方に

情熱大陸スキージャンプの小林選手の番組で小林選手が腰を痛めてマッサージを受けている場面で気になる所がもう一箇所。

それは、小林選手ではなく小林選手をマッサージしているマッサージ師さんの重心線の位置です。

小林選手の腰をマッサージしているマッサージ師さんは腰を揉む為に身体を前方に倒れかけていました。腰を揉む為には身体を乗せると体重が乗り揉み応えが出るのでしょうか。しかし、古武術的観点からから見ると疑問が湧きます。

それは過剰な力が発生し、その力に対して力で対応しなければならないので緊張が高まってしまうからです。

身体を前方に傾けると重心線が当然前方に移動します。

重心線が前方に移動すれば、身体が前方に倒れ、身体の周りに何もなければマッサージ師さんの身体は前方に倒れてしまいます。

でもマッサージ師さんは倒れません。

当然ですが、倒れない様に下肢の前面の筋肉を緊張させ支えます。そして倒れかかる先には小林選手の腰があるのでその腰が支えになりマッサージ師さんは倒れる事はありません。そしてその圧力がマッサージの効果となるのでしょう。

日常動作からすれば、何の問題もなく疑問のない一場面なのでしょうが、古武術を稽古していると気になります。

それはマッサージ師さんが倒れない為に様々な力が使われている事が気になるのです。

自身の中で前方に倒れかかる身体を脚力で支えて倒れない様に身体を保持します。また倒れかかる先に小林選手の腰もマッサージ師さんの身体を支える為に一役買っている事になります。一役買う為に頑張らなくてはなりません。

いずれも筋肉が緊張しなければなりません。

マッサージ師さんの身体が前方に傾くだけでいろいろな緊張が生じ、この緊張でマッサージ師さんの身体が維持されていると考えると小林選手の腰を含め固着している事になります。

古武術では、この固着が「居着く」として避けなけらばなりません。

じっとしている事が居着きとされ、狙われやすい場面となるのですが、動きが澱んでも同じです。

身体を保持する為にいろいろと固着してしまい、この固着が身体の動きを阻害する要因として動きを澱ませてしまう事があります。

澱んだ動きはスムーズに力が伝わりません。ヒトは力がスムーズに伝わらないと伝える為に力の出力を高めて伝達しようとします。

そこでどんどん力が必要になり、力が強い方が有利となるのですが、古武術では力の出力を高めるのではなく澱んだ動きを無くす事で動きを伝達する方法を稽古します。

例えばマッサージの場面であれば、身体が傾くと身体が緊張し、この緊張が相手に伝わり相手もこの緊張に対応して緊張が起こります。緊張した筋肉を緊張した筋肉で刺激を加えようとするとより緊張が生じてしまいより強い力が必要になるように思います。

どうせなら傾かない方が効率が良いのではないでしょうか。

また傾いたとしても重心の移動と身体の位置が一致していれば傾いていても筋肉を緊張させ固着状態に陥いっていないので動きが澱む要因にはならないはずです。

基本は傾かない事。

傾く事で必要以上に支えなければなりませんが、地球に対してまっすぐ立てば必要最小限の力で立ち支える事ができます。

そしてまっすぐ立った状態からまっすぐ落ちる事ができれば、ほとんど力を使わずに済み、後は重力に任せる事ができます。

落ちる動力は、身体で作る筋力ではなく重力を利用すれば筋肉を緊張させなくても済み、またその力を受ける相手も余計な緊張もなく、あまりにも当たり前な力である重力は認識さえ感じさせない力であり抵抗の余地がありません。

 そんなところに小林選手の腰があれば、筋肉を緊張させずに済むように思います。

その方がお互い楽ではないでしょうか。