力を抜く身体目指し古武術稽古

脱力したら体は動かない、きちんと体を動かせた時力の存在は無くなる。そのために構えを創る事に全力を尽くそう。

武術的「相手の力を利用する」ビジネスとの共通点

ビジネスの世界で「相手の力を利用する」というとなにやらネガティブな印象を持ちそうです。

人の褌で相撲を取るようなイメージが先行するのではないでしょうか。

人が開拓した市場を自分の手柄にしたり、会社を乗っ取ったり、要領よく立ち回る姿が頭に浮かびます。

その様なTVドラマがあったとすると、初めは上手く事が進み濡れ手で粟だが最後には失敗に終わるのがパターンです。

武術的に「相手の力を利用する」をビジネスの世界に例えると全く逆の世界が見えてきます。

以前にも書いた様に相手の力を利用するとは、相手の力を引き出す事であると。

相手となるビジネスパートナーの力を引き出し、その力のお陰で自らが成功する、今流行りのウインウインの関係を構築する事が技の術理に含まれているのではないかと考えてしまいます。

武術の場合、相手の力を引き出すために先ず自分の制御を最大限行うことが求められます。

そして、最大限制御された動きは同調し一つの動きに集約され、動きがどんどんシンプルになり最終的には動きが消えてしまいます。

動きは消えますが作用は残るため相手は消えた動きによる作用に翻弄され自らが崩れ動くことになり、結果的に作用を受ける相手自らが崩れ動く事となります。

この術理は現代ビジネスに通ずる様に思います。

今も昔も人の能力を引き上げ、引き出す事は大変な事で、本屋に行けばマネジメント関係の書籍だけでも相当な幅を利かせています。

詳しくは存じ上げませんが、ホンダの本田宗一郎さんやソニー井深大さんはきっとビジネスパートナーの力を引き出す技術に秀でていたと思われます。

それは相手を動かす能力ではなく、自らが動く能力が高かったということ。

自らが動く能力とは、いろいろ動き回ることではなく、想い、ビジョン、方向性などが首尾一貫し、軸がブレず明確な動きが含まれます。

一貫し明確な動きは、ゆるぎないコンセプトを作り上げ誰にでもわかり易く伝わったに違いありません。

社長はそんな凄い構想があるのか、一丁その構想に乗ってみるか。

おやじの夢を是非実現させてやりたい。

トップダウンで情報が伝達されるのではなく、感化された周囲の人々が自主的にトップの思いやビジョンを汲み取り勝手に自ら行動に移すと、結果的にボトムアップの状態が出来上がるはずです。

ブレのないコンセプトはボトムアップの構造を持ちながら、トップダウンの命令系統が機能する理想的な形式です。

ブレのない軸(武術では正中線)を持つ人の動きが周りの人を巻き込ませることが出来るのは、軸が安定すればするほど軸の周りを回り易くなることは物理的に証明されています。

軸は出来るだけ動かない。すれば回りが動き易くなる。

逆に軸がぶれると回り難くなることは当然起こります。

回りが必然的に動いている様は自発的に動いている様に見えるし、動いている本人も自発的に動いていると勘違いしているが、それは軸がきちんと安定しているからであり、軸がきちんと安定していれば、勝手にその軸の周りに回りだすことは自然の成り行きです。

ビジネスでの成功者は、どっかり構えているのではなく、軸としての機能を果たすことにより回りが動き易い環境を創りだし、そしていつの間にかその軸の周りを人が動かされている状態こそ、相手の力を引き出していると言えるのではないでしょうか。