力を抜く身体目指し古武術稽古

脱力したら体は動かない、きちんと体を動かせた時力の存在は無くなる。そのために構えを創る事に全力を尽くそう。

ピアニスト牛田智大さんのファンになったオジサン 2

昨年末初めて牛田智大さんのラフマニノフピアノ協奏曲第2番を聞いてファンになって以来、今月2度目の演奏を神戸国際会館ホールで聴く機会を得ました。

今回はラフマニノフピアノ協奏曲第3番です。

この曲は、ほとんど聴き覚えが無く最後の盛り上がりだけかろうじて印象にある程度ですので、楽しめるかどうか少々不安でしたが、前回の第2番の印象が今でも強く残り期待十分。

そして、彼の身体操作から新たな武術の気付きが生まれるか大変楽しみです。

特に前回では身体の繋がりが実体する線を創りだすのではなく、その線が出来るであろうスペースにわだかまりを作らない事は大きな収穫となりました。

さて、こんな期待を持ちながらホワイエに入ると、いきなりスーツを着たおじさんが一列に並んでヘンな雰囲気でした。パンフを見ると銀行の協賛ということで行員さんが招待客を迎えていたのです。

・・・ということは、牛田君のファン以外にもファンではないけど招待されて来た人が相当数いた感じです。

ラフマニノフピアノ協奏曲第3番って第2番と違って私みたいなシロートには良さがわかりづらい通好みの曲だと思っていたら、やはり、唯一聞き覚えのある最後の盛り上がりになって、前列の女性がLINEを始めだしたので一気に気持ちが萎えてしまいました。

 

やはり第3番は第2番より難曲らしく、牛田君も苦戦していたのでしょうか?

残念ながら私は、前回のように響きが感じられませんでした。

 

苦戦の姿は、肩に現れている様な気がします。

 

前回気付いた指先から躯幹(体幹)に連なるルートに、わだかまりが無ければ力がスムーズに伝わり、音であれば反響するスペースが生まれ、武術であれば手ごたえが無くなる状況が出来るのだが、今回の彼の肩はわだかまっていたように感じたのです。

普通だと「肩に力が入る」となるのですが、彼らレベルと一般的な力の入れようは格段の差があると思いますが、彼らのレベルでも一旦わだかまりが出来ると力は途絶え、技は消えてしまう、そんな気がしました。

では、わだかまりとは何なのか?「肩に力が入る」どのような状況なのか?

蟠り(わだかまり)とは、すらすらと運ばず、つっかえていること。

肩の状況でいうと、躯幹(体幹)で作られた動きが肩を通過して腕や手指に伝わる時に肩の辺りで何らかの障害もしくは抵抗が生じ力が途絶えてしまう状態が起こると、力は伝わらず、つっかえたところから又新たな力を出力し腕から手指に動きを伝える。

この力は、躯幹(体幹)からの力が一旦消滅して、又新たに肩から力を出力しているので躯幹(体幹)部の力は全く影響なく、肩から先の腕力となるため、躯幹となる「身体」に響かない。

躯幹(体幹)が動いて初めて周囲の「身体」に影響を与えることができるはずです。

 

ではなぜ肩でつっかえて蟠ってしまうのか、

それは、肩周辺の筋肉は感情など細やかな身体や気持ちの変化に対して非常に敏感で、緊張し易い性質であり、身体の状態や感情のあり方を端的に表してくれ、これらの筋肉が過剰に緊張することで「実」となり、これがつっかえる要素となりえます。

例えば、後姿でも肩の表情でその人が喜んでいるのか、愁いでいるのか読み取れることがあります。

特に、ストレスや緊張した場面では肩が上がり、その人の心境が垣間見ることが出来ます。

肩に力が入るとき。肩の外側を覆う三角筋や背部の僧帽筋や肩甲骨周辺の筋等が過剰に緊張すると、上腕骨が上方に引き上げられ肩上部のスペースが狭くなります。

この肩の位置が力を途絶えさせる致命的な実体のある「実」の状態といえ、前回に書いたように力を伝えるラインは、「虚」の状態である時、実体はないが確かに存在する状況が生まれ、実体の実との差が明確になる程、虚のラインは力強い力の働きを表してくれます。

この力強い虚のラインは、何も力を入れない時が一番虚であり力が発揮されるポテンシャルを秘め、その形のまま肩の関節位置を変えないで腕を動かすことが出来ればベストです。

しかし、腕を使うとすると、肩関節が力の強い(外側・上方)筋肉に引っ張られて関節の位置が変わってしまいます。

一般的に腕を使う場合、ほぼ前方もしくは側方に動かすことが多いですが、その時に必ずといって良いほど肩の上(外側)にある三角筋等が先ず働いて腕を動かし始めますが、その瞬間に肩関節中の上腕骨頭は肩甲骨(肩)に対して引きあがってしまい位置関係が変わってしまいます。

関節の位置関係を変えずに腕を動かすとすれば、腕を下げる筋肉(広背筋)を同時に作用させ上腕骨頭を下方に引き下げることで関節位置をキープすることが出来るのです。

感覚的には、腕を上げる時肩関節が沈むぐらで丁度良いぐらいです。

普通にバンザイをすると必ず肩は上がりますが、武術的には肩は下がります。

このように躯幹(体幹)の力を発揮させ、ポテンシャルを引き出すためには、肩が上がらないように肩を操作しなければなりません。

・・・といろいろ書きましたが、子供がゲームをしていて、そのゲーム機を取り上げようとし、子供がその手を不意に払った時、手だけでなく身体ごと崩れそうになる事がありますが、このとき子供は無意識に肩周辺の筋肉を巧みに使い、関節位置変えずに「ひょいっ」っとこなしてびっくりすることがあります。

そんなたわいも無い動作が大人になるにつれ、出来なくなったりします。

ですので、武術の稽古は子供、女性、大人と別ける必要がありません。

子供のほうがよっぽど凄い動きをすることがあります。

大人になるにつれ、固定観念が固まり体の動きもパターン化され、多様に動かなくても動けるような動き方を自然に身に着けて動きの可能性を狭めて行き、自ら動かなくても良い身体に向っていきます。

10台後半の牛田君もいろいろな試練にぶち当たって大人へと向っているでしょうが、頑張ることで失う能力があるかもしれません、今ある能力を信じてその能力を伸ばして欲しいと願っています。