力を抜く身体目指し古武術稽古

脱力したら体は動かない、きちんと体を動かせた時力の存在は無くなる。そのために構えを創る事に全力を尽くそう。

常識を覆すマイケルジャクソンの凄いダンス

マイケルジャクソンのダンスが凄いところは、物理現象に挑戦しているところで、ムーンウォーク、ゼログラビティ、スピンターンなどの代表作は、物理的な力を感じさせない動きを強調させる事により普通ではない状況を作り上げ人々を脅かせたと思います。

ムーンウォークは、床からの反力があたかも無くなった様に振る舞い、床を滑る様に進むのではなくあえて後退している様に見せています。あの様な手法はマイケルジャクソンが行う以前から存在していたようですが、ムーンウォークと名付けて物理現象を意識的に消そうとした彼の動きがオリジナルとなり、そしてあの動きが彼の代名詞ともなったのではないでしょうか。

ゼログラビティは、まさしく無重力を表現しようとしたらあの形にたどり着いたのでしょう。トリックはあるものの物理的な常識を覆した形に世間は驚かされたものです。

身体の重さの中心となる重心は、必ず身体を支える両足の支持面の中に収まっていなければ必ず倒れてしまいます。物理的な事が分からなくともあれだけ倒れてしまうと立っていられない事は経験的に誰でも思えます。

誰でもが知っている常識を覆す動きは、衝撃的で印象に深く刻まれるでしょう。

マイケルジャクソンのスピンターンは、遠心力への挑戦のように見えます。

一般的に身体を回転させると力が外向きに働きますが、彼の回転運動には遠心力が感じられません。

先日TVでバレリーナの番組コマーシャルで回転場面が映し出され、一流のバレリーナでも力が外側に向かって見えましたが、彼の回転運動に関して全く外側への力は感じ取れませんでした。自分なりにマイケルジャクソンとこの一流バレリーナの違いは何かと考えたところ回転軸のありようの違いに気がついたのです。

一流バレリーナの回転軸の胸部レベルでやや歪みを感じ取る事ができ、その部分の回転軸が膨らみをを帯び回転する事で回転軸自体が外方に広がってしまいその結果、力が外側に広がるように見えたのではないかと推測したのです。それに引き換えマイケルジャクソンの回転軸は上から下まで歪む事なく真っ直ぐ身体の中心を貫き、そして歪みの無い軸が回転すれば工業用シャフトが回るように遠心力を感じる事なく、回っている感じも無く見えてしまいます。

回っているのに回っていない感じがする。この意外性が人々の印象に残る要因だと考えます。

マイケルジャクソンの頭の中は、人に感動を与えるためにはどうしたらいいか考えて考え抜いたと想像できます。(人に物事を伝えるためにはそこまでしなければならないのか)

その考えの中に意外性や常識を覆す、普通ではありえない事象を常に考えそしてそれを表現するためにはどの様にすれば実現できるのかを考え、考え抜いたのでしょう。そして実現させるにはどの様に表現できるかをストイックに行動してきたと思います。

古武術を稽古する中で彼の発想は大変参考になりました。

普通の動きを普通に行っていている間はどのように頑張っても技や術は生まれません。普通の動きをいくら速くしてもいくら力一杯強くしても普通の動きには変わりないから。

普通の動きが普通ではなくなる動きとは、動きの「質」が変わらなければならないのです。この質が変わるためには、普通の動きではなく意外な動き、常識を覆す動きがどこまで出来るかに掛かってきます。

 マイケルジャクソンの物まねは出来ますが、質を伴う真似はできません。

それは、身体の使い方、動かし方が違うから物まねは出来ても真似ることが出来ないことになります。

ヒトの身体は、およそ400近い筋肉があり260余りの関節を動かし動作を行っていると考えると動きの組み合わせは無限大に広がります。

技や術の質を高めるためには、アクロバット的な動きが出来ることではなく誰でもが出来る範囲の動きを正確に緻密に最高の動きの組み合わせを紡ぎ出す作業が必要です。

無限大に広がる動きの組み合わせを理想の動きに近づけるために、多くの動き方の中から不必要な動きを削除して、削除して、削除して・・・・どんどん削除した先に理想の動きに近づくはずです。

巷のメディアや書籍で「直ぐ出来る何々・・」「理想を直ぐつかむ方法・・」などはありえません。

技や術は作り出すもの創造するものではなく、余計なもの不必要な動きいらない物事を排除した先に埋もれている物事を掘り出す作業に感じます。

そのような作業は一朝一夕には行きません。

書籍を出版するとすれば題名は、「なかなか出来ない理想の動き・死ぬ直前に満足できる動きが出来上がるかも」

そんな本は誰も見向きはしません。自己満足の世界です。

それでも満足は出来ないのでしょう。なぜなら技術は無限だから。

だからマイケルジャクソンも死ぬ直前まで技を練り上げていたのでしょう。